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2020/02/29

【娘の友達】第29話「破棄」-(仮置き、あらすじだけ)

あらすじ

如月古都からのメッセージが着信しても、浮かない表情の市川晃介は、仕事が手につかない。夏休みで在宅の古都は、晃介宛てに書いてあった手紙を破棄する。古都から取り上げたレンズ付きフィルムを持て余した晃介は、プリントショップに持ち込む。


(話数の順に表示する目的で、執筆日時を操作しています。実際の執筆は2020年3月22日です。)

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【娘の友達】第28話「ふりだし」-古都パパ登場! 性的虐待は無し...?

あらすじ

如月古都の父母は、自宅リビングルームで寛ぐが、古都は門の脇で手持無沙汰。玄関で母がすがって止めるのも甲斐なく、父はまた家を出ていってしまう。泣き崩れる母の手を取る古都。市川晃介は、まだ美也が戻らない自宅に着くと、着信した古都からのメッセージを削除する。

古都ママの毒性

古都の抱える家庭の事情の一端が、また明らかになる。
古都の父は帰宅することはあっても、長くはいつかず、母以外の女性との交際があるらしい。如月邸は総二階の洋館で、坂道に面して建つ...こういうの、山の手っていうの?。家構えや身に着けているものなどから、例えば市川家などよりも如月家の家計は裕福である印象を受ける。従って古都パパは、愛人が囲えるだけの経済的余裕があるということらしい
古都ママは、古都パパの前では、明らかに、古都を疎んじている。第21話「同じ月は見ている」では、古都と母の次のような会話がある。

「日曜日 
久しぶりに
お父さんが帰ってくるのよ
もちろん
あなたは
お父さんと
一言も
話さないわよね?」


「娘の友達」講談社(萩原あさ美著)
第21話「同じ月は見ている」から引用

「うん...」
「あんな人と
話したら駄目よ
あんなのほんと
ろくでもない男
なんだから」

「もちろん」の一言から、「父と話すな」というのは古都ママが古都に課した恒常的なルールであり、それを念押ししたことが分かる。古都は古都パパが帰宅するたびに、古都ママに追い出されるのだろう。古都を話題にする夫に、古都ママがいら立つような描写もある。古都も古都パパも、古都ママは独占しなければ気が済まないようだ。
すがりつく古都ママを
古都パパが振り払い、再び家を出ていくと、彼女は人目をはばかることもなく、玄関の外に突っ伏して、声を上げて号泣する。年甲斐もなく、泣き声で母を呼ぶ子の様に。母親としての人格が未熟であることが窺われる。

「あなたは
本当によく出来た
良い子になったわ」

なだめる古都を、古都ママはそう誉める。自分が旦那とお茶を飲む間は外で待ち、自分が傷ついたときは慰めてくれる娘。古都ママが古都の価値を認めるのは、自分の都合の良いように動いてくれるときなのだ。逆に、古都が独自の人格で、自分の知らない行動をとることを、彼女は許していない。
やはり十全に機能している家庭ではない。


待つ古都
古都が門の外で待っていたのはなぜだろうか。こんなメンドくさい母親にかかわりたくないとすれば、もっと距離をとり、近所の公園とかコンビニにでも行って、時間をつぶせばよいではないか。
しかし古都は、父に傷つく母を、すぐに慰められる距離で待機した。古都ママの身勝手な誉め言葉に、一瞬、反抗の表情を見せるが、結局彼女の手に自分の手を重ねる。
晃介を子犬に例える古都には、傷つき泣きわめく母もまた、そのように見えるのだろう。この母には、娘の自分が必要なのだ、と。母と共依存の関係にある古都が描写されている。


「娘の友達」講談社(萩原あさ美著) 第6話「ゲームしましょうか」から引用

古都は、母親の抱いた負の感情を吸収する役割を家庭で負わされてきた。そこまで尽くしても、古都ママからは、古都パパに次ぐ序列でしか遇されない。古都パパがいれば、古都は不要なのだ。それが自分の価値であると思わされてきた。古都の自己肯定感の低さの理由は、そこにあるだろう。
晃介の負の感情を処理するためにスキンシップを多用するのも、
母を落ち着かせるために身に付けたやり方を、そのまま晃介に向けているのではないか。自分にはそうするぐらいしかできないし、それが自分の価値であり仕事だと、無意識に、反射的に、体が動いてしまうのではないか。共依存の傾向は、古都と晃介の関係にもあるとみなければならないだろう。それが古都にとっての愛のカタチとすれば、やるせない。

初登場の父親
古都パパの心は、すでに古都ママを離れている。帰宅しても妻との会話に積極性が感じられない。
表情がほとんど窺えず、ミステリアスな印象の古都パパ。古都ママの言いつけを守ってか、古都は父親と一言も言葉を交わさない。

「お前は
小さいころから
何も変わらないな...」

古都パパが彼女に向けた言葉は、何を意味するのだろう。古都が幼少の頃から、古都ママの言いつけを従順に守り、古都パパとのコミュニケーションを取ろうとしないということなのだろうか。古都の表情は素っ気なく、感情が読みとれない。
古都パパは、恐らく、妻の下から逃げ出したのだろう。家庭に残した古都が気がかりでたまに帰宅するが、古都がいなければすぐに立ち去ろうとする。古都ママも、夫の帰宅が古都目当てと何となく分かっているから、彼女に嫉妬し、疎んじる。
古都は、家庭を捨てた父親の想いが受け容れられないのだろうか。自分にだけ、毒ママを押し付けやがって、このやろー、みたいな。だから白けた表情なのかな。

秘密を妄想(ハズれっぽい、良かった♪)
サブタイトルの"L'un des grands secrets d'une femme fatale." (ファム・ファタールの大きな秘密)とは何であるかについて、読者はあれことれ憶測を広げずにはいられない。第1話についてのブログでは、「古都は初めから晃介狙い」仮説を書いた。
実は、まともな商業誌連載で陰惨なハナシにはしないだろうと思いつつも、筆者が心配していたのが、父親からの性的虐待。古都ママみたいな女性だと、離婚歴の一回ぐらいあるかもしれない。古都は前夫との間の子だったりすれば、夫が妻の連れ子にチョッカイ出すというのも、あるのではないかと。で、古都ママには「秘密」ということで。ナボコフの「ロリータ」みたいに。
だってねー、あれだけスリスリ、くんくん、濃密なスキンシップで晃介を逃げられなくするんだから、すでに男を知っていると見ても不自然ではないよね。古都ちゃんの、真っすぐなのに歪みが見える性格を説明するにも、説得力がある。
しかしながら、第28話で父を見る古都ちゃんの表情を見ると、嫌悪とか困惑とかの感情がうかがえない。
だから28話以降は、ちょっとだけ安心して物語を読み進めている。

(話数の順に表示する目的で、ブログに標示される執筆日時を操作しています。実際の執筆は2020年3月17日です。)

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【娘の友達】第27話「変と普通」-(仮置き)修羅場にひるまぬ古都さまがカッコ良すぎる件

あらすじ

市川晃介の部下と美也の友人・三崎正一郎も居合わせる中、如月古都がバイトする店先で、晃介と娘・美也の諍いは続いていた。そこへ店を出た古都が現れると、美也と堂々と向き合い、晃介を庇う。翌日、部下と娘からの信用を同時に損ね、古都をも失う結果に消沈する晃介。 






(以下、当ブログ「【娘の友達】第35話『嗅がれる男』-『月』はなぜ見ている?」から引用)
月とは、二人の宿命的な関係性の象徴であると、筆者は解したい。人が月を見ることは、人の意思でやめることができる。だが二人を照射する月は、どこに隠れても逃れようがない。惹かれ合う二人の関係性の背後には、同じアダルトチルドレンという宿命があり、それが容易に拭い去ることができないのと同じように。
第21話の月は、古都が市川邸を訪ねるという、ビッグイベントを従えている。


「娘の友達」講談社(萩原あさ美著)第21話「同じ月は見ている」から引用

第27話では、親友であり晃介の娘でもある美也に晃介との関係が知られた後、古都は晃介に尋ねている。

「今日の月って...
...綺麗ですよね」

彼女の問いは、美也に知られたとしても、二人の宿命性に変わりはないとの隠喩として理解できる。だから古都は「良かった」と、笑顔で晃介の答えを喜ぶ。古都は翌日から、晃介にあててLINEのメッセージ送信を再開している。

月が二人の宿命を照らし出す象徴であることを、古都は正しく認識しているが、晃介は分かっていない。

(話数の順に表示する目的で、執筆日時を操作しています。実際の執筆は2020年3月22日です。)

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2020/02/25

『娘の友達1巻』第1話「出会い」- ディティールに注目すると見える。古都の「秘密」とは!?

自分は変態、かも

自分、筆者は、如月古都(きさらぎこと)に惚れた。

「サイコホラー」とも評される『娘の友達』(萩原あさ美著)。主人公の中年男・市川晃介(いちかわこうすけ)は、家庭と仕事から来るストレスに溺れている。そこに、娘の友達の女子高生・如月古都(きさらぎこと)が現れ、彼を救うと同時に、
奔放な言動で彼を翻弄する。彼が守ってきた日常が徐々に壊されていく様が、このような評価を生むのは、至極ご尤もなことだ。
しかしそれは、良き父、尊敬される上司として社会的に真っ当であろうとする晃介に感情移入するからこその評価であって、自分はそのようには読まなかった。古都に惚れてしまったからだ。
いつの間にか古都を考え、彼女の心理を、思考を、解釈し理解しようとしている自分に気づく。彼女の目で見、耳で聞いたことを追体験したいと想ってみる。現実の恋愛で、かつて自分がそうしていたように。
第2話以降、古都は図らずも(?)晃介を苦しめ、「俺のことどう思っているの」等と悩ませる。その苦悩を味わうのが、なぜ晃介で、自分ではないのか。羨ましいと思いこそすれ、怖いとは思わない。古都に憧憬だけでなく、脅威を覚えるような晃介は、所詮は彼女に釣り合わない哀れな中年なのだ。彼の苦悩など、どうでもよい。自分にとって、『娘の友達』を繰り返し読む価値は、如月古都に逢うことだけにある。
まあ50代にもなって、マンガのキャラクターに夢中になるとは思ってもみなかった。全く、不覚の至りで、笑ってしまう。


初回だから平和、なのか...?

「娘の友達」第1巻講談社(萩原あさ美著) 13ページから引用
古都の初登場シーンの表情。エプロンにはSHIGERUのロゴ
徐々に晃介を追い詰めていく古都はまだその片鱗を示しておらず、平和なスタートのように見える。
むしろ、課長職への抜擢によるプレッシャーや、妻の死と娘・美也の反抗的な態度、彼の努力に無理解な学校と、晃介をとりまく環境が彼にストレスを与えていることを強調する回となっている。回想シーンでは、母親から叱咤されているが、これは晃介の生育環境の問題を暗示するものなのだろうか。
古都は表情豊かで、物おじせずに気さくに話しかけてくるキャラとして描かれている。
一見して問題を抱えるのは晃介で、古都は天真爛漫、可憐で優しく、問題と無縁の、絵に描いたような(まーマンガだからそうなのだが)女子高生だ。
但し、彼女がSHIGERUで囁く時、高校で心労の晃介を気遣うとき、顔を不必要に晃介に接近させているのには気付かねばなるまい。他者との距離感が掴みづらいのかとも感じるし、「そういう女か」とも思える。美也の不登校という、大人でもしり込みするような市川家の家庭内の問題に介入しようとする辺りは、並みの高校1年生の行動力でなく、後の破滅的な行動への伏線となっている。振り返って再読すれば、すでに不穏の影はあるのだ。

喫茶店のウェイトレスとして、古都の言葉遣いは板についている。酔客に絡まれた彼女の、まだ接客に慣れていないとの言葉は、額面通りに取るべきなのだろうか。晃介に彼女を救う機会を与え、「何かお礼させてください」と借りを作り、距離を詰め、手玉にとる手管だったとみるのも可能ではないか。
第2話以降は、彼女の言動の真意は何か、彼女は真実を語っているのかと考えざるを得ない場面が続出する展開となる。そういう文脈で初回の彼女の言動を振り返ると、このような解釈も、それほど無理筋でない。接客業とはいえ、古都が初登場で晃介に見せる笑顔は、いかにもあざとい。フルページ使ってるし。


アダルトチルドレン

彼女は、いわゆるアダルトチルドレンとしての問題を抱えていることが後程分かってくる。機能不全の家庭に育ちトラウマにあえぐ古都が、筆者から見れば愛おしい。筆者の家庭は、それほど問題があったとは思わないけれど、なぜかその手の人を呼び寄せてしまい、恋愛関係に落ち、傷つけあった。彼女たちと自分が持っていた、無意識にお互いを嗅ぎ当てる力はすさまじく、それは本当に宿命的で、避けられないものなのだ。古都は晃介を見逃すはずがなく、彼女が一目見たときから、彼の運命は決まっていた...のかも。


あらすじとディティール

「娘の友達」第1巻講談社(萩原あさ美著) 9ページから引用
「八重洲中央口前」交差点の信号機の描写
亡き妻の遺影に焼香し、娘の美也を家に残して出勤する晃介。テレビに映し出された時刻は7:04。職場は高層ビル内にあるようで、課長昇進を控える。仕事帰りに、喫茶店(カップやエプロンに入ったロゴは「SHIGERU」=店名?)に寄るが、その前に「八重洲中央口前」交差点が描写され、職場は東京駅近辺であることが示唆される。
古都はSHIGERUのウェイトレスで、この日二人は初めて出会う(実は再会なのだが)。晃介に続いて入った男3人組の酔客に絡まれた古都を、晃介は機転で救う。
美也の女性教員(教室は1-A)は晃介を呼び出し、美也が不登校との認識を示して叱責する。
心労に階段で休む晃介に、古都が気づく。古都の上履きには「1-A」とあり、美也と同級。晃介の名刺を一瞥した古都は、美也と小学生のときに同級であったことを指摘し、過去の接点を晃介も思い出す。
古都は晃介の力になりたいと、Lineのアカウントを交換することを申し出る。

「娘の友達」講談社(萩原あさ美著) 第1話「出会い」から引用
桜ヶ丘学園高校のスリッパ。右は如月古都の上履き
※登場人物に半そでTシャツを着ている人物が複数登場することから、季節は夏と思われる。
※SHIGERUは店主の名前に因むものだろうか。店主は古都の祖父であることが後に明かされる。

※酔客3人組が話題にしていたカラオケ店名は「ソナタ」で、後の伏線。
※晃介の名刺には「株式会社大鳥家具企画広報部係長」「東京都中央区」等とある。
※晃介のスリッパには「桜ケ丘学園高校」と名入れがある。東京都北区には私立「桜丘(さくらがおか)高等学校」があり、スカートにタータンチェック柄と無地柄の設定がある等は本作の制服描写に似る。
桜丘高等学校ホームページから引用
https://sakuragaoka.ac.jp/schoollife/uniform/


見逃せないディティール

細部に答えが隠されているのは、本作品の特徴なのだろうか。例えば、古都の発言からは、現在の古都と美也は同学年ということまでは分かるが、同級生であるとまでは分からない。晃介が入ってゆく教室に「1-A」と表示され、古都の上履きにも「1-A」と書かれているディティールを重ね合わせて、はじめて二人がクラスメイトだと分かる。この様に断片的な情報を配置する手法は、綿密な作品構成力を要するだろう。読者としては、明示されない答えを、自分の自由な解釈で探すという楽しみがあることになり、作品に奥深さを与えている。
このことはつまり、今後の作品の進むべき方向性が、既に作品中で示されている可能性を示唆しているといえないだろうか。


秘密とは何か


本作品の副題はフランス語だが、 邦訳すると「ファム・ファタールの大きな秘密」となるとのことだ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A8%98%E3%81%AE%E5%8F%8B%E9%81%94)。「大きな秘密」というのが気になる。物語が進行するにつれ明らかになるのであろうこの秘密とは何であるのかを、あれこれと考えてみるのもこの作品を楽しむ一つのポイントだろう。
そこで、筆者なりに妄想した古都ちゃんの秘密だが。
「娘の友達」講談社(萩原あさ美著) 第1話「出会い」から引用
美也を介して晃介との接点が過去にあった古都
古都は機能不全の家庭に育ち、ほとんど父親はいないも同然。小学生の時に、同級の美也とその父・晃介と映画を見に行った時から既に、古都にとって優しい晃介は憧れの存在だった。
それぞれ別の中学に進学したが、古都は美也と同じ高校を受験。実は美也を通じて晃介との接点を復活できるのではないかとの思惑があったのだ。

現実は古都にとって好都合に推移し、晃介の妻は、他界してしまった。不登校になった美也がいなくなれば、晃介は古都だけのものになる。その実現のために、古都は晃介を篭絡し、社会的に逸脱した行動を取らせて美也が離反するように画策する。不登校で晃介を苦しませた美也が自分から出ていくよう謀ることに、躊躇する必要はない。晃介にとって、本当に必要なのは美也でなく自分だという歪んだ自負が古都にはある。
当然、SHIGERUで、自分を酔客から救った(または救わせた)中年男性が、晃介その人であることは、古都は初めから認識していた。だからこそ、「お礼させてください」と、次につながる借りを作ろうとしたのだ。
来店した中年が晃介だと
初めから分かっていたなら、なぜ、もっと早いテンポで古都はアプローチしなかったのか? 
読者はそう思うかもしれない。しかし、いきなりそれだと、

「きーちゃんです!」
「あ、きーちゃん!?

「LINE交換してください」
「...へ!?」
「で、水族館に行ってその後ホテル」
「大人をからかうのも、いい加減にしなさい


で終わり。失敗。


「娘の友達」第1巻講談社(萩原あさ美著) 第1話「出会い」から引用
LINEアカウント交換を晃介に申し出る古都

「お礼をさせてください」という細い糸からたぐりよせて、不登校の美也という共通の悩みを設定。「お父さんの力になりたい」という殺し文句でLineのアカウントをゲット。以後、着々と本丸に迫る古都。
仮にSHIGERUで晃介との再会がなかったとしても、美也とは仲良しなんだから、高校に通う3年間をかけてチャンスをうかがえばよかったわけ。美也を出しに晃介の自宅を訪問するプランは、晃介とSHIGERUで再会する前に、予め練られていた可能性すらある。何しろ古都が糸口さえ掴めば、晃介の陥落は時間の問題でしかない。

...ここまで酷い話にはなってほしくないけどね。ほんとはハッピーエンドにしてほしいよ。